-西大寺観音院トイレ改築企画提案書-

各時代の伝統建築を継承する意匠計画

 今回の提案にあたり、単なる様式の模倣ではなく奈良〜安土桃山時代の様式を抽出し、伝統工法ではなく現代の建築技術によって合理的に施工できる現代の伝統建築を試行した。

□奈良時代 西大寺観音院より

西大寺観音院が建立された奈良時代の建築は寺院建築が多く、茅やヒノキ葺きの屋根に比べ、瓦葺きの屋根が採用されている。

また、この時代の建築には薬師寺東塔などに見られる三手先と呼ばれる組物などの構法が生まれた。そして、瓦葺きの屋根にこの飛えん垂木のような組物を利用した屋根構造が特徴である。

□室町時代 宇喜多直家公より

宇喜多直家公の時代である室町時代では、書院造りと呼ばれる現代の和風建築の原型となる形が誕生した。真壁を基本とし地窓や、縁側によって外部とのつながりが感じられる空間が特徴である。

□安土桃山時代 宇喜多秀家公より

秀家公の安土桃山時代は、茶室などに数寄屋造りが用いられている。

この時代の建築は、風流でありつつ繊細、質素かつ洗礼された意匠が特徴で、自然との調和を図るため、自然素材が多く用いられた。華美な装飾を施さず豊かな内部空間を構成している。

伝統建築の美しい「反り」の考え方、つくり方

□「反り屋根」の構造計画について

屋根が描く美しい曲線は、この建築の大切な要素である。

隣接する本堂の屋根のシルエットと相似となるカテナリー曲線の屋根を、短冊状のヒノキを切削加工し、構造用ビスで材軸方向に重ね繋ぎ留めた「吊り垂木」を、棟桁から軒桁に等間隔に架け渡す架構としている。

棟桁には「吊り屋根」の鉛直反力、軒桁には鉛直反力と水平スラストが作用するため、棟と桁を連続梁とするため長尺の集成材を用いている。そのほかの柱梁などはスギ、ヒノキなどの製材である。

一般的にカテナリー曲線の建築は美しいが数学的な難易度が高く難しいとされていた。しかし、本提案は3Dデザインツールを利用した数学と力学の理論による描写、計算、施工図を実行する。そして、引張方向の接合を可能とする構造用ビスを併用した「在来軸組工法」を採用することにより、ふつうの技能で製作と施工を可能とする構造計画である。